2026年3月21日四旬節第5主日礼拝(紫)のご案内
2026年3月21日(土曜日)午前10時30分
司式・説教 小泉基牧師
説教題 「終わった・終わっていない」
第1日課・エゼキエル書37章1節~14節、
第2日課・ローマの信徒への手紙5章1節~11節、
福音書・ヨハネによる福音書11章1節~45節、
「ドイツのキリスト教を語るコラム」札幌教会北礼拝堂信徒 川田洋一執筆
名作『車輪の下』に描かれたルター派信仰2
ヴュルテンベルク地方の美しい町に住む主人公ハンス・ギーベンラートとって、
重要な大人の隣人がもう一人います。
大学で神学を学び、この町の教会に赴任している牧師です。
この牧師は学校長と同様に知識人として尊敬された存在であり、
靴職人フライクとは別の世界に生きているインテリ知識人です。
神学校入試に合格し、牧師になる道を歩みだしている主人公ハンス・ギーベンラートを
応援するため、町の牧師が入学まで間、聖書のギリシア語を教えることになります。
そのための教科書として、牧師が選んだのはルカ福音書でした。
ルカ福音書は新約聖書の中では、ギリシア語の語彙が豊富で、複雑なギリシア語文法を
駆使した文章で書かれています。ルカ福音書のギリシア語をマスターするならば、
他の福音書にあるギリシア語本文を容易に読めるようになりますので、
主人公ハンス・ギーベンラートの学びを助けようとする気持ちが牧師にはあるのです。
町の牧師は靴職人フライクが思っているような信仰心の薄い知識人ではなく、
聖書本文の研究に真剣に取り組んでいることも判ります。
ヘルマン・ヘッセはその理由を説明することなく、ルカ福音書を用いたギリシア語の
予習を記述しています。ここには神学の学びに挫折した経験を持つ作者本人の思いが
込められていると言っていいかもしれません。さらに、素朴で敬虔な信仰と
古典文献学の上に形成された現代聖書学との乖離も描かれています。
『車輪の下』は詰め込み教育批判の書として、今まで日本で長く読まれてきました。
確かに、語学の文法学習は難度の高いもので、詰め込み教育になりがちです。
しかし、『車輪の下』で語られている信仰や祈りに関する記述を読み直すと、
キリスト教信仰のあり方をテーマにしている文学作品と見なすこともできます。
受験勉強の最中であっても、主人公ハンス・ギーベンラートは町の学校で早朝、
聖書とブレンツによる州教会教理問答書を読むことで、信仰を養っています。
ヴュルテンベルク地方に宗教改革を導入したブレンツは、救世主としての
イエス・キリストへの信仰をとても重視していました。
イエス・キリストに集中した信仰は、使徒パウロの書簡でも語られており、
その伝統は宗教改革者ルターにも引き継がれ、ヴュルテンベルク地方の
ルター派州教会に定着しました。
祈りを重視する敬虔な保守派、現代聖書学の影響を受けたリベラル派が、
このヴュルテンベルク福音主義州教会が併存しています。しかしながら、両者共に、
イエス・キリストを信仰の中心に置いていますので、一つの教会に共存できています。

